こんにちは、スバルグラフィックのMIYUです。
前回の最後に、私はまだFG28金赤のインキ缶すら見たことがない、と書きました。第1回はカラーガイドのCMYK値、第2回はチップの測色。数字と見本を相手に2回分話をしてきて、本物のインキを1回も見ていない。それが気になって、工場に行きました。
FG27金赤、FG28金赤、FG29金赤。配合表の中でしか知らなかった名前が、ラベルに印刷されて目の前にある。それだけのことなのに、少し緊張しました。ここから先は、見本ではなく本物の話です。
用紙はOKトップコート。オフセット印刷機で、FG27金赤、FG28金赤、FG29金赤をそれぞれベタで刷りました。
刷り上がりを受け取って、DICカラーガイドを開きます。前回測ったのと同じ3枚、DIC564B(FG27)、DIC159(FG28)、DIC565B(FG29)。どれも中間色1本でできているチップです。当社の印刷物の横にチップを置きました。
どちらがチップで、どちらが当社の印刷物か?
私にはわかりませんでした。並べて見る。いったん目を離して、もう一度見る。順番を入れ替えてみる。前回、チップを「DICさんが作ったお手本」だと思って測色していました。当社の印刷物が、そのお手本とぴったり合っている。正直、ここまで合うと思っていませんでした。
見た目の比較はやめて、測色します。前回と同じテシコン スペクトロデンスFG(分光濃度計)です。チップを基準にして、当社の印刷物がそこからどれだけ離れているかをΔE(色差)で出しました。
|
DIC番号 |
中間色 |
チップ基準値(L* / a* / b*) |
当社の印刷物 ΔE |
|
DIC159 |
FG28金赤 |
58.11 / 70.05 / 54.40 |
1.47 |
|
DIC564B |
FG27金赤 |
57.03 / 71.68 / 57.09 |
0.60 |
|
DIC565B |
FG29金赤 |
56.50 / 71.57 / 59.62 |
1.14 |
ΔEは3.0を超えると、誰が見ても違いがわかると言われる数字です。今回はいちばん離れたFG28でも1.47。いちばん近かったFG27は0.60。横に並べて、じっと見比べて、それでも気づくかどうかの距離です。あんなに見比べて悩んだのに、数字はあっさりしていました。
DICさんの見本と、当社の機械で当社のインキで刷った紙が、数字の上でも同じでした。チップは見本ではなく、当社でも刷れる色でした。
ここからが今回の本題です。
第1回の失敗と同じ手順を、今度はわざと、3色ぶんやります。イラレのスウォッチからDIC番号を選んで、DIC公式サイトに載っているCMYK値に置き換える。
|
DIC番号 |
CMYK |
|
DIC159 |
C0 M86 Y90 K0 |
|
DIC564B |
C0 M78 Y76 K0 |
|
DIC565B |
C0 M80 Y100 K0 |
用紙は同じOKトップコート。PODのプロセスカラーでプリントしました。
第1回のときは、ムラケンさんが試しにプリントしたものを見ただけでした。今回はデータも用紙も自分で用意して、出力を自分で取りに行きました。オフセットの3本の横に並べます。
並べた瞬間、はっきりと認識できました。第1回で見た、あの赤です。
オフセットのキンアカは、紙の上でぱっと前に出てきます。PODの赤は、同じ赤のはずなのに一段遠くにいる。明るさが足りないというより、色の勢いが途中で止まっている感じです。第1回で「沈んでいる」「くすんでいる」と書いたのは、この見え方のことでした。
第1回はムラケンさんのプリントだったから、と心のどこかで思っていた気がします。今回は自分で全部やりました。それでも同じでした。これがいちばんこたえました。
測色します。オフセットのときと同じく、チップを基準にしたΔEです。
|
DIC番号 |
中間色 |
当社の印刷物 ΔE |
PODプロセス ΔE |
|
DIC159 |
FG28金赤 |
1.47 |
15.36 |
|
DIC564B |
FG27金赤 |
0.60 |
24.11 |
|
DIC565B |
FG29金赤 |
1.14 |
17.56 |
15.36、24.11、17.56。
ΔEは6.5を超えると、人はまったく別の色として捉えます。PP加工のシリーズで書いた基準です。その2倍から4倍近く。数字を見て、驚くというより、納得しました。並べたときに感じた「遠くにいる」は、目の錯覚ではありませんでした。
いちばん離れたのはDIC564B、FG27金赤の24.11でした。オフセットではいちばんチップに近かった番号です。特色ではいちばんぴったり合った色が、プロセスではいちばん遠くなる。理由はわかりません。数字だけ置いておきます。
第1回でハリソンさんに言われました。PODで出ないんじゃない、CMYKのプロセスカラーでキンアカが出ないんだ、と。
あのときは、聞いた話でした。ベテランがそう言うならそうなんだろう、で終わっていました。今は自分で刷って、自分で測色した数字が手元にあります。だから自分の言葉で言います。
キンアカは、プロセスカラーでは出ません。
オフセットでもPODでも、CMYKの掛け合わせで出す限り、あの赤には届きません。第1回の失敗は、変換の数値を間違えたのではなくて、プロセスでやると決めた時点で決まっていました。数字をどう振っても、たどり着けない場所にいる色でした。
だからキンアカは特色です。FG28金赤で刷る。ハリソンさんもムラケンさんもそう言っていたし、配合表もそう言っていた。自分で刷って測色して、ようやく私もそう言えます。
……と、ここで終わるつもりでした。
でも、第1回のあの案件は、まだ手元にあります。20部の増刷。オフセットを回すには少なすぎる。PODのプロセスでは出ない。
本当に、打つ手はないんでしょうか。
第4回、最終回です。
缶を見て、刷って、測色して、やっと言い切れました。ハリソンさんの一言を自分の数字で言えるようになるまで、3回かかりました。
オフセットの刷り上がりを見たときは、うれしかったです。当社の印刷物がDICさんのチップと区別がつかない。あんなにきれいに出るんだ、と。
その横にPODを置いて、正直ちょっと悔しかった。同じ赤を頼まれて、片方はこんなに出るのに、もう片方は届かない。
でも、あきらめたわけじゃないです。