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無線綴じとあじろ綴じの違いを知って最適な製本を


無線綴じとあじろ綴じは、いずれも接着剤を用いてページを綴じる製本方法ですが、その構造や特性には明確な違いがあります。本記事では、両者の特徴、メリット・デメリット、適した用途について詳しく解説します。

無線綴じの特徴

無線綴じは、針金や糸を使用せず、接着剤でページを綴じる製本方法です。印刷された本文の背部分をミーリングカッターで削り、接着剤を塗布して固め、表紙で包みます。このため、背表紙に針金や糸が見えないことから「無線綴じ」と呼ばれます。

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無線綴じの製本方法

オフセット印刷の場合
  1. 折丁を丁合
    印刷された各折丁(折りたたまれた数ページ分)を順番に揃えて重ねます。
  2. ミーリング加工
    本の背部分を2~3mmほどギザギザに削り、凹凸をつけます。この凹凸が接着剤(EVA糊)の浸透を助け、より強固にページが接着されます。
  3. 本文と表紙の接着
    表紙で本文全体をくるみ、接着剤でしっかりと貼り付けます。
  4. 三方断裁して完成
    製本後、上・下・小口(本の3辺)を断裁して、仕上げます。
 
デジタルプリントの場合
1. 丁合済みのプリント用紙をミーリング加工
すでに順番通りに揃えられたプリント用紙の背をミーリングし、接着剤が浸透しやすいよう凹凸をつけます。
2. 表紙でくるみ接着
本文全体を表紙でくるみ、接着剤で固定します。
3. 三方断裁して完成
上・下・小口を断裁し、完成です。
 

このように、Offset印刷とデジタルプリントで多少手順が異なりますが、どちらもミーリングで背に凹凸をつけることで、強度の高い無線綴じ製本が可能になります。なかでも無線綴じ最大のポイントはミーリングカッターで削る部分です。16p折や8p折のノド部分にはミーリングで削る幅のドブ(余白)が必要です。PODでペラ丁合済の刷本をミーリングする場合も削る幅のドブが必要になります。ミーリングで削る幅は一般的に3㎜の場合が多いです。場合によっては2㎜や1㎜のときもあります。

写真1:ミーリングした本の背中
写真2:ミーリングカッター(BQ-500)

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あじろ綴じの特徴 

あじろ綴じは、無線綴じを改良し、より強度と耐久性を高めた製本方法です。無線綴じがミーリング加工で各ページをバラバラにして接着するのに対し、あじろ綴じは折丁(折りたたんだページ束)を使用し、背部分に小さなミシン目状のスリット(あじろ)を入れます。このスリットに接着剤が浸透することで、各ページがしっかりと繋がり、強度が増します。頻繁に使用される冊子や長期保存が必要な資料に最適です。
たとえば、16ページの折丁では、4枚の紙が1つの束となり、この背部分にスリットを入れることで接着剤が深く浸透し、ページが外れにくくなるよう工夫されています。

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あじろ綴じの製本方法 

  1. 折丁の準備
    印刷された用紙を所定のページ数ごとに折りたたんで折丁を作り、背部分にミシン目状のスリットを入れ、接着剤が浸透しやすい状態にします。
  2. 丁合
    複数の折丁をページ順に重ねて正確に揃えます。
  3. くるみ製本
    丁合した本文を表紙で包み、背部分に接着剤を塗布して固定します。
  4. 三方断裁
    上・下・前小口の三辺を断裁して仕上げます。
あじろ綴じは、このように折丁とスリット加工によって接着剤が深く浸透し、強固に固定されるため、長期間使用されてもページの抜け落ちが起きにくい製本方法です。
 
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無線綴じとあじろ綴じの使い分け

無線綴じを選択するパターン

無線綴じは、比較的シンプルで手軽な製本方法として、次のようなケースでよく使われます。
  1.  文字中心の資料や冊子:問題集やテキスト、学習参考書(学参もの)など、写真やグラフィックよりも文字が多い資料。
  2. 上質紙を使用する印刷物:余白が多く、文字中心でモノクロのもの。特に報告書や計画書などで、表組みや図面が多く、背の角をしっかり出す必要がある場合。
  3. 漫画・コミック:カラーよりも白黒印刷が主で、文字と画像がバランスよく配置される冊子。
  4. 扉や折り込みページが多いもの:ページの構成上、ペラ丁合(各ページがバラバラの状態)になっている場合や、デジタルプリンタで少部数印刷された場合に無線綴じが適しています。
  5. 少部数・デジタルプリント用のカタログ:POD(Print On Demand)で印刷され、丁合済みの冊子を製本する際も無線綴じが便利です。

あじろ綴じを選択するパターン

あじろ綴じは、16ページや32ページの折丁(複数ページを折りたたんだ印刷物)を組み合わせ、各折丁の背に小さなスリット(あじろ)を入れて接着剤をしっかりと浸透させる方法です。そのため、折丁が必要で、デジタルプリンタから出力されたペラ丁合の冊子はあじろ綴じにはできません。
 
  1. 写真集や高品質なカタログ
    コート紙などでフルカラー印刷され、ノド(綴じ部分)までしっかりと印刷が求められるものに向いています。
  2. 見返しが必要な冊子
    本文と表紙を強固に接着するため、見返し(内表紙)がある冊子に適しています。
  3. 全面ベタやカラー印刷が多い冊子
    特にコート紙やマットコート紙、微塗工紙を使用し、頻繁に開閉することでページ外れが懸念される場合に向いています。
  4. 長期使用が求められる資料
    頻繁に開閉してもページが抜け落ちにくく、耐久性が必要なものに最適です。

印刷方式 製本方法 製品ジャンル 
デジタルプリント 無線綴じ 写真集やフルカラーのカタログ
報告書・計画書などモノクロ冊子
漫画やコミック
オフセット印刷 あじろ綴じ カタログ・写真集
見返しがある冊子
全面ベタや頻繁に開閉する冊子
耐久性が必要で長期間使用する冊子
無線綴じ 報告書・計画書などモノクロ冊子
印刷用紙 製本方法 説 明
コート
マットコート
あじろ綴じ 表面が滑らかなため接着剤が浸透しにくいため、無線綴じよりもあじろ綴じが適しています。
上質紙・ラフ紙 無線綴じ コーティングされていない用紙には無線綴じが適しています。

この表は、無線綴じとあじろ綴じの選択が、印刷方式や製品ジャンル、さらには冊子の用途や使用頻度によって異なることを示しています。デジタルプリントでは無線綴じが主流で、オフセット印刷では耐久性や使用目的に応じて無線綴じとあじろ綴じが使い分けられます。

 さらに、用紙の種類も製本方法の選択に影響を与えます。コート紙やマットコート紙のように表面が滑らかな紙は、接着剤が浸透しにくいため、無線綴じよりもあじろ綴じが適しています。一方、上質紙やラフ紙のようなコーティングされていない用紙には、無線綴じが適しており、コスト面や仕上がりの面でも効率的です。

 製本に失敗しないためのコツと注意点 

無線綴じ・あじろ綴じは「並製本」と呼ばれ、糊で本文と表紙を接着して本にする製本方法です。丈夫で品質の高い製品にするためには、糊がしっかりと浸透し、接着が強固であることが重要です。せっかく製本しても、すぐに壊れてしまう本では品質的にNGとなります。ここでは、そんなトラブルを防ぎ、耐久性の高い製本を作るための方法について説明します。

今回は、糊が接着しやすい環境を作る方法や、印刷物をどのように準備すれば良いかに焦点を当てています。糊がしっかりつかなければ丈夫な本にはならないため、適切な接着を実現するポイントを解説します。
 

表紙データの作成ポイント 

無線綴じやあじろ綴じの製本では、表紙データの作成時に以下の点に注意することが重要です。
 
背糊と横糊の役割
  • 背糊:本文の背部分と表紙を接着します。
  • 横糊:本文の最初と最後のページ(表2・表3)を表紙の内側に接着します。
インキの影響と白抜き処理の必要性
紙の表面にインキが塗布されている部分は、接着剤の浸透を妨げ、接着強度が低下する可能性があります。そのため、表紙と本文が接着される部分(背部分や表2・表3の接着箇所)には、インキを避けて白く抜く「白抜き処理」を施すことが推奨されます。これにより、接着剤が紙に直接浸透し、強固な接着が可能となります。
 
適切な白抜き処理を行うことで、製本の耐久性が向上し、ページの脱落や剥がれを防ぐことができます。製本の品質を高めるために、これらのポイントを押さえて表紙データを作成しましょう。
 
背部分の処理
  • 背部分の白抜き:本文の背と表紙が接着される部分にはインキを乗せず、白く抜いてください。
    これにより、接着剤が紙に直接浸透し、強固な接着が可能となります。
横糊部分の処理(表紙)
  • 表2と本文1ページ目のノド側:表紙の内側(表2)と本文の最初のページの綴じ側(ノド側)に、それぞれ3mmの白抜きを設けてください。
  • 表3と最終ページのノド側:同様に、表3と本文の最終ページのノド側にも3mmの白抜きを設けます。
これらの処理を行わないと、表紙と本文の接着部分が剥がれやすくなり、製本の品質が低下する可能性があります。確実に白抜きを施し、強固な接着を実現しましょう。
 

写真6:背部分の白抜き処理をした表紙(表2-3)
写真7:白抜き処理の拡大図

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本文トップページと最終ページの横糊処理(トップ・最終ページは3㎜逃がします)

写真8:最初の折(表2側の絵柄を3㎜逃がします)
写真9:最終の
折(表3側の絵柄を3㎜逃がします)

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本文データの作成ポイント

無線綴じの場合
無線綴じ製本では、ミーリング加工を行う際に、背の部分を約3mm削ります。この削られる部分にはインクが乗らないよう、白く抜いておくことが重要です。さらに、削られる3mmに加えて0.5mmの余白を設け、合計3.5mmを白く抜くことをおすすめします。この余白がないと、インクと糊が反発し、接着が弱くなる可能性があります。したがって、背の部分にインクがかからないよう、適切な余白を確保することが、製本の品質向上につながります。
 
写真10:ミーリングの余白を付けた面付け(全体画像)
写真11:ミーリングドブ拡大画像
 
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あじろ綴じの場合
あじろ綴じでは、ミーリング加工を行わないため、ノド部分の余白(ドブ)は不要です。しかし、背部分にスリット(ミシン目)を入れ、そこから接着剤を浸透させるため、スリット部分にインクが乗っていると接着が弱くなる可能性があります。そのため、弊社ではスリット部分に左右各0.5mm、合計1mmの白抜きを設けています。これにより、インクと接着剤の反発を防ぎ、強度の高い製本が可能となります。
この処理は特に全面ベタが多いコート紙などで重要です。この処理を忘れてしまうと、製本後に接着剤が十分に浸透せず、ページが簡単に外れてしまうトラブルが発生する可能性があります。そのため、確実に行うべき非常に重要な工程です。
 
写真12:1㎜の白抜きを付けた面付け(全体画像)
写真13:1㎜の白抜き拡大画像
 
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最適な製本方法を選び、品質を高めるためのポイント 

無線綴じとあじろ綴じ、それぞれの製本方法の特徴や適した用途について理解することで、目的に合った最適な製本が可能になります。また、製本の品質を保つためには、インキと接着剤の相性を考慮した白抜き処理や、背糊・横糊を適切に処理することが重要です。

無線綴じでは、ミーリング加工と余白を確保し、あじろ綴じではスリット部分に白抜き処理を行い、インキがかからないようにすることで、接着剤の浸透性と強度を高められます。さらに、使用する紙の種類や印刷方式を考慮することで、長持ちする製本が実現できます。

スバルグラフィックが提供する安心の印刷・製本サポート

スバルグラフィックでは、お客様の製品に最適な製本方法をご提案し、品質向上をサポートいたします。製本はすべて自社工場で行い、印刷から折り、綴じまでの全工程を一貫して自社で管理するため、高い品質を保証いたします。

無線綴じは、EVA糊やPUR糊に対応したBQ-500で、あじろ綴じはEVA糊専用のCABS4000を用いて製本しています。このように充実した製本設備により、製品に合わせた適切なデータ処理や仕上げが可能です。デザインデータをご入稿いただくだけで、当社が面倒な処理をすべて対応いたしますのでご安心ください。

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