posts

第4回:PODでは無理だったキンアカ。蛍光ピンクを足したらΔE1.04【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】

作成者: スバルグラフィック|2026.9.17

こんにちは、スバルグラフィックのMIYUです。
前回、PODのCMYKではキンアカが出ないことを、見た目と測色の両方で確認しました。
でも、肝心の「20部の増刷をどうするか」は未解決のまま。くやしいし、スッキリしない…
そんなとき、社内で1枚のテストプリントを見る機会があったのです。

 

夕焼けのテストプリントを見て、ひらめいた

当社は2026年の初めに、レボリアPC1120という新しいモデルのPODを導入しました。CMYKに2色のスペシャルトナーを足した6色機で、蛍光ピンク、シルバー、ホワイト、クリアニスに対応しています。

このスペシャルトナーで何ができるのか。テストプリントを行い、社内で評価会が開催されました。

その中の1枚に、オレンジの夕焼けの風景写真がありました。蛍光ピンクとシルバーをスペシャルトナーとして加えた表現で、プロセスでプリントした夕焼けより明らかに鮮やかでした。

蛍光ピンクとシルバーをスペシャルトナーとして加えた夕焼けのテストプリント。上のバイオレットから下のオレンジまで、プロセスでは出ない鮮やかさで階調がつながっています。

見た瞬間、直感でピンときました。

「あれっ、これ、キンアカの再現にも応用できるかも?」

CMYKでは出なかった鮮やかな赤からオレンジが、蛍光ピンクを使うと出ている。だったらキンアカもいけるんじゃないか。そう思いました。

 

DPルームに押しかけた

これまで、ハリソンさんから「オフセットならFG28金赤」、ムラケンさんから「CMYKのPODでは出ない」と教わってきました。

じゃあ、蛍光ピンクを積めるPC1120ならどうなるのか。担当のミキヤさんがいるDPルームへ行きました。

PC1120とミキヤさん。手に持っているのが、あの夕焼けのテストプリントです。

 

蛍光ピンクで、CMYKの色域が広がる

ミキヤさんの説明を聞いて、私はこんなふうに理解しています。

CMYKには作れる色の範囲があります。キンアカは、その外側にあった。
そこへ蛍光ピンクを加えると、再現できる色域が広がる。

ミキヤさんの言葉では、こうです。

「DICやPANTONEの特色を使わないと出ない色だった領域が、スペシャルトナーとCMYの組み合わせで出せるようになった。ただし全部じゃないよ。一部分だよ」

キンアカが、その一部分に入っているのかどうか。それを確かめます。

 

コントローラーがDIC159の配合候補を26個出してきた

PC1120のコントローラーには、DICやPANTONEの特色を疑似的に配合する機能があります。ミキヤさんがDIC159と指定して、試しにチャートをプリントしてくれました。

SpotColor Chartの全体。左上にName : DIC 159とあります。26個の丸が、Original、Brighter、Darkerの3つの輪に分かれて並んでいます。

Brighterの輪の拡大。丸ごとにC、M、Y、K、Pの数字が付いています。Pが蛍光ピンクの量です。

キンアカのプリントで失敗したとき、私はDIC159を、DICのWebサイトで指定されたCMYKの数値に置き換えました。今、目の前にあるのは、蛍光ピンクを混ぜた配合が26通り。この中からDICのチップに近い丸を探して、その配合でDIC159を置き換えます。

DICカラーガイドのチップを隣に置くと、かなり近い丸があります。CMYKでプリントした、あのくすんだ赤とは明らかに違う。

「これ、いけてるんじゃない?」

いちばん近く見えたのがOriginalの2番でした。C5.88 M39.61 Y100 K0 P100。蛍光ピンクが100%入っています。Brighterの輪は明るすぎ、Darkerの輪は沈みすぎ。この配合でDIC159を置き換えることにしました。

 

同じチャートを3つ、横に並べて、測色した

PC1120でDIC159を置き換えて、チャートをプリントします。
用紙はOKトップコートです。
オフセットでFG28金赤を刷ったチャートと、PODのプロセスカラーでプリントしたチャートを出してきて、3枚を横に並べました。

 

左からオフセット、PODプロセス、PC1120。同じOKトップコートに、同じDIC159、DIC565、DIC564B、DIC565Bのチャートです。真ん中のプロセスだけ、ベタも網点もくすんでいます。

プロセスの赤だけが、はっきり違います。オフセットとPC1120は、どちらがどちらか、すぐには分かりませんでした。

見た目で同じと言っても説得力がないので、測色します。測色機はテシコン・スペクトロデンスFGで、DICのチップを基準色にしたΔE値を測色します。ΔEは、基準色との色差を数値化したものです。数字が小さいほど基準色に近くなります。

DIC159だけでなく、DIC564B(FG27金赤)とDIC565B(FG29金赤)も、それぞれ別のチャートから丸を選んで測色しました。

PC1120でプリントしたDIC159の測色画面。ΔE 1.04。下に見えているのはDICカラーガイドのDIC159のチップです。

 

DIC564B(FG27金赤)はΔE 0.54でした。

DIC565B(FG29金赤)はΔE 0.91でした。

DIC番号 中間色 オフセット ΔE PODプロセス ΔE PC1120 蛍光ピンク ΔE
DIC159 FG28金赤 1.47 15.36 1.04
DIC564B FG27金赤 0.60 24.11 0.54
DIC565B FG29金赤 1.14 17.56 0.91

結果は0.54から1.04。
前回、CMYKでプリントしたときは15.36から24.11でした。

見た目だけではありません。数字でも、CMYKとは全く違う結果になりました。
CMYKでは届かなかった色域に、蛍光ピンクを加えることで届いた!

これなら、十分納得できるのではないでしょうか。PODでキンアカ、できます。

そもそものきっかけだった、20部の増刷

DIC159を蛍光ピンク入りの配合に置き換え、PC1120でプリントして、実際に納品しました。

これで、最初の宿題もようやく終わりました。小ロットの特色案件に、PODという新しい選択肢ができました。

ただし、何でも再現できるわけではない

今回確認したのは、OKトップコート上のベタです。網点や写真の中の金赤、上質紙やマット紙では結果が変わる可能性があります。網点や写真は、データを調整するか、プリント時のトーンカーブで補正して、プリントして見た目で判断する必要があります。

蛍光ピンクを使えば特色が全部再現できる、という話ではありません。今回確認できたのは、FG27、FG28、FG29の金赤について、PODで十分近い色まで持っていけた、という話でした。

左;PC1120で蛍光ピンクDIC159をプリント  右;PC1120プロセスモードでプリント

MIYUのひとこと

最初は、DICのWebサイトに載っていたCMYK値をそのまま使って失敗しました。そこからDICチップを測って、インキ缶を見て、オフセットで刷って、PODでプリントして、また測色しました。

そして最後に答えをくれたのは、キンアカとは全然関係なさそうだった1枚の夕焼けでした。

「PODでは無理」で終わらせなくてよかった。自分の目で見る。数字でも確かめる。そして、まだ方法があるんじゃないかと疑ってみる。

キンアカがプリントできたこと以上に、このblog4回の経験が大きな収穫だったような気がします。

連載【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】の他記事はこちら  

➡第1回:キンアカで失敗しました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
➡第2回:キンアカの正体は配合表に書いてありました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
➡第3回:キンアカはプロセスカラーでは出ません。刷って、測って、確定しました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
第4回:PODでは無理だったキンアカ。蛍光ピンクを足したらΔE1.04【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】