第2回:キンアカの正体は配合表に書いてありました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
こんにちは、スバルグラフィックのMIYUです。
前回、DIC159をCMYKに置き換えて失敗した話を書きました。
数字が出てくると、それだけで正解に見えてしまう。そう反省したばかりの私です。
今回は数字の中身を調べました。きちんと自分の目で確かめながら。
FG28には兄弟がいました
前回のラスト、ハリソンさんに教わったことを思い出してみてください。
特色は1色ずつ独立して存在しているのではなく、ベースになるインキがある。
キンアカのベースはFG28という中間色でした。
調べてみると、FG28には兄弟がいました。
FG27金赤。FG28金赤。FG29金赤。
DICの中間色インキに、金赤と名の付くものが3本あります。
この3本が実際どう使われているのか。
DICカラーガイドの配合表を調べました。

混ぜて作る組、DIC156・157・158
キンアカとしてよく指定されるDIC番号のうち、156から158は、FG28金赤に別のインキを混ぜて作られています。
| DIC番号 | FG28金赤 | FG14紅 | FG45透明黄 |
| DIC156 | 51.9% | 32.0% | 16.1% |
| DIC157 | 83.2% | 16.8% | ― |
| DIC158 | 89.8% | 10.2% | ― |

表にして気づきました。番号が進むほど、FG28の比率が上がっていきます。
156で半分、157で8割、158で9割。
紅がだんだん減っていって、その先にあるのが159です。

インキ1本の組、DIC159・564B・565・565B
| DIC番号 | 配合 |
| DIC159 | FG28金赤 100% |
| DIC564B | FG27金赤 100% |
| DIC565 | FG28金赤 100% |
| DIC565B | FG29金赤 100% |
DIC159の配合欄には、FG28金赤:100%とだけ書いてあります。
混ぜ物なし。インキ1本、そのまま。
キンアカという色が先にあって、それをインキで再現しているのだと思っていましたが、逆でした。
FG28金赤というインキがあって、それをそのまま刷った色にDIC159という番号が付いている。
キンアカは、インキそのものでした。
番号のうしろの「B」って何ですか
564Bや565Bの、番号のうしろに付くB。
気になって調べたら、DICの公式サイトのよくある質問に答えがありました。
要約すると、後から追加された色です。
本当なら番号の末尾に足すところ、色相の並び順は守りたい。
だから近い番号のうしろにBを付けて、間に割り込ませた。
クラスの出席番号の途中に転校生が入ってくる感じです。
前からいる人の番号は変えずに、並びだけ正しくする工夫でした。
営業とオペレーター、答えが同じでした
配合表が読めるようになったところで、現場ではどう使い分けているのか。
またハリソンさんに聞きました。
「キンアカ指定はFG28金赤で刷ってれば、ほぼOK」
印刷営業30年の経験値が出した答えです。
では、FG27とFG29はいつ使うんですか?
「前回見本があって、FG28だと色が合わないとき。調整でたまに使うくらいかな。DIC番号で564Bや565Bと指定されたら、そのときは1本で使うよ」
念のため、前回の試し刷りを持ってきてくれたムラケンさんにも聞きました。
オペレーター歴25年です。
「キンアカならFG28でしょ」
営業とオペレーター、立場も違えば見ている工程も違う2人が、同じ番号を口にしました。
キンアカの標準はFG28金赤、DIC番号なら159。
現場の経験と配合表が、同じところを指しています。
解けないナゾがひとつ
DIC159とDIC565。どちらもFG28金赤100%です。
同じインキ1本。
なのに番号が違います。公式サイトの数値も違います。
| DIC159 | DIC565 | |
| CMYK | C0 M86 Y90 K0 | C0 M84 Y100 K0 |
| RGB | 249, 55, 40 | 246, 44, 17 |
| HTML | #F93728 | #F62C11 |
| マンセル | 7.7 R 5.5/17.7 | 7.6 R 5.3/19.5 |

同じインキなのに、なぜ番号が2つあるのか。なぜ公式の数値まで違うのか。
カラーガイドのチップを並べて見比べると、たしかに微妙に違って見える気がします。
調べてもわかりませんでした。ナゾはナゾのまま、ここに置いておきます。
チップを測ってみました
ナゾは解けませんでした。それでも、3本のインキがどう違うのかは数字にできるはずです。
使ったのはテシコン スペクトロデンスFG。分光濃度計です。
カラーガイドのチップを測って、色を数値で出してくれます。

測ったのは、インキ1本でできている3枚。
FG28がDIC159、FG27がDIC564B、FG29がDIC565Bです。
| チップ | 中間色 | L* | a* | b* |
| DIC159 | FG28金赤 | 58.11 | 70.05 | 54.40 |
| DIC564B | FG27金赤 | 57.03 | 71.68 | 57.09 |
| DIC565B | FG29金赤 | 56.50 | 71.57 | 59.62 |

L*は明るさ、a*は赤み、b*は黄みを表す数字です。
並べてみて、はっきりしました。
a*は70から71で、3本ともほとんど同じ。
動いているのはb*です。54.40、57.09、59.62。
3本の違いは、赤みではなく黄みでした。
しかも、標準として使われているFG28がいちばん黄みが低い。
てっきり真ん中にいると思っていました。
この3本がお互いにどれだけ離れているのか、色差(ΔE)も計算してみました。
| 組み合わせ | ΔE |
| FG28 と FG27 | 3.33 |
| FG28 と FG29 | 5.67 |
| FG27 と FG29 | 2.59 |
ΔEは3.0を超えるとパッと見で違いが分かるレベルです。
FG28とFG29は5.67。
同じ「金赤」という名前で売られている2本が、別の色と言われても仕方ない距離にありました。
ここでハリソンさんの話が腑に落ちました。
見本と色が合わないときにFG27やFG29を使う。
あれは黄みを足したり引いたりしていたんだと思います。3本の差がb*にしか出ていないのだから、黄み方向の微調整に使うインキとして持っている。30年の経験でやっていたことが、測ってみたら数字の上でもそう見えました。
次回
配合表を読んで、チップを測って、ここまで来ました。
それでも私が見ているのは、まだDICさんが作った見本です。自社の機械で刷った紙は1枚も見ていません。
次回は刷ります。FG27金赤、FG28金赤、FG29金赤。
3本をオフセットで刷って、自分の目で見比べます。もちろん測色もします。
そして同じデータをPODでも刷ります。プロセスカラーでキンアカがどこまで出ないのか。出なくても、きちんとこの目で確かめてきます。
連載【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】の他記事はこちら
➡第1回:キンアカで失敗しました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
➡第2回:キンアカの正体は配合表に書いてありました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
