第4回:PODでは無理だったキンアカ。蛍光ピンクを足したらΔE1.04【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
こんにちは、スバルグラフィックのMIYUです。
前回、PODのCMYKではキンアカが出ないことを、見た目と測色の両方で確認しました。
でも、肝心の「20部の増刷をどうするか」は未解決のまま。くやしいし、スッキリしない…
そんなとき、社内で1枚のテストプリントを見る機会があったのです。
夕焼けのテストプリントを見て、ひらめいた
当社は2026年の初めに、レボリアPC1120という新しいモデルのPODを導入しました。CMYKに2色のスペシャルトナーを足した6色機で、蛍光ピンク、シルバー、ホワイト、クリアニスに対応しています。
このスペシャルトナーで何ができるのか。テストプリントを行い、社内で評価会が開催されました。
その中の1枚に、オレンジの夕焼けの風景写真がありました。蛍光ピンクとシルバーをスペシャルトナーとして加えた表現で、プロセスでプリントした夕焼けより明らかに鮮やかでした。
蛍光ピンクとシルバーをスペシャルトナーとして加えた夕焼けのテストプリント。上のバイオレットから下のオレンジまで、プロセスでは出ない鮮やかさで階調がつながっています。
見た瞬間、直感でピンときました。
「あれっ、これ、キンアカの再現にも応用できるかも?」
CMYKでは出なかった鮮やかな赤からオレンジが、蛍光ピンクを使うと出ている。だったらキンアカもいけるんじゃないか。そう思いました。
DPルームに押しかけた
これまで、ハリソンさんから「オフセットならFG28金赤」、ムラケンさんから「CMYKのPODでは出ない」と教わってきました。
じゃあ、蛍光ピンクを積めるPC1120ならどうなるのか。担当のミキヤさんがいるDPルームへ行きました。
PC1120とミキヤさん。手に持っているのが、あの夕焼けのテストプリントです。
蛍光ピンクで、CMYKの色域が広がる
ミキヤさんの説明を聞いて、私はこんなふうに理解しています。
CMYKには作れる色の範囲があります。キンアカは、その外側にあった。
そこへ蛍光ピンクを加えると、再現できる色域が広がる。
ミキヤさんの言葉では、こうです。
「DICやPANTONEの特色を使わないと出ない色だった領域が、スペシャルトナーとCMYの組み合わせで出せるようになった。ただし全部じゃないよ。一部分だよ」
キンアカが、その一部分に入っているのかどうか。それを確かめます。
コントローラーがDIC159の配合候補を26個出してきた
PC1120のコントローラーには、DICやPANTONEの特色を疑似的に配合する機能があります。ミキヤさんがDIC159と指定して、試しにチャートをプリントしてくれました。
SpotColor Chartの全体。左上にName : DIC 159とあります。26個の丸が、Original、Brighter、Darkerの3つの輪に分かれて並んでいます。
Brighterの輪の拡大。丸ごとにC、M、Y、K、Pの数字が付いています。Pが蛍光ピンクの量です。
キンアカのプリントで失敗したとき、私はDIC159を、DICのWebサイトで指定されたCMYKの数値に置き換えました。今、目の前にあるのは、蛍光ピンクを混ぜた配合が26通り。この中からDICのチップに近い丸を探して、その配合でDIC159を置き換えます。
DICカラーガイドのチップを隣に置くと、かなり近い丸があります。CMYKでプリントした、あのくすんだ赤とは明らかに違う。
「これ、いけてるんじゃない?」
いちばん近く見えたのがOriginalの2番でした。C5.88 M39.61 Y100 K0 P100。蛍光ピンクが100%入っています。Brighterの輪は明るすぎ、Darkerの輪は沈みすぎ。この配合でDIC159を置き換えることにしました。
同じチャートを3つ、横に並べて、測色した
PC1120でDIC159を置き換えて、チャートをプリントします。
用紙はOKトップコートです。
オフセットでFG28金赤を刷ったチャートと、PODのプロセスカラーでプリントしたチャートを出してきて、3枚を横に並べました。
左からオフセット、PODプロセス、PC1120。同じOKトップコートに、同じDIC159、DIC565、DIC564B、DIC565Bのチャートです。真ん中のプロセスだけ、ベタも網点もくすんでいます。
プロセスの赤だけが、はっきり違います。オフセットとPC1120は、どちらがどちらか、すぐには分かりませんでした。
見た目で同じと言っても説得力がないので、測色します。測色機はテシコン・スペクトロデンスFGで、DICのチップを基準色にしたΔE値を測色します。ΔEは、基準色との色差を数値化したものです。数字が小さいほど基準色に近くなります。
DIC159だけでなく、DIC564B(FG27金赤)とDIC565B(FG29金赤)も、それぞれ別のチャートから丸を選んで測色しました。
PC1120でプリントしたDIC159の測色画面。ΔE 1.04。下に見えているのはDICカラーガイドのDIC159のチップです。
DIC564B(FG27金赤)はΔE 0.54でした。
DIC565B(FG29金赤)はΔE 0.91でした。
| DIC番号 | 中間色 | オフセット ΔE | PODプロセス ΔE | PC1120 蛍光ピンク ΔE |
| DIC159 | FG28金赤 | 1.47 | 15.36 | 1.04 |
| DIC564B | FG27金赤 | 0.60 | 24.11 | 0.54 |
| DIC565B | FG29金赤 | 1.14 | 17.56 | 0.91 |
結果は0.54から1.04。
前回、CMYKでプリントしたときは15.36から24.11でした。
見た目だけではありません。数字でも、CMYKとは全く違う結果になりました。
CMYKでは届かなかった色域に、蛍光ピンクを加えることで届いた!
これなら、十分納得できるのではないでしょうか。PODでキンアカ、できます。
そもそものきっかけだった、20部の増刷
DIC159を蛍光ピンク入りの配合に置き換え、PC1120でプリントして、実際に納品しました。
これで、最初の宿題もようやく終わりました。小ロットの特色案件に、PODという新しい選択肢ができました。
ただし、何でも再現できるわけではない
今回確認したのは、OKトップコート上のベタです。網点や写真の中の金赤、上質紙やマット紙では結果が変わる可能性があります。網点や写真は、データを調整するか、プリント時のトーンカーブで補正して、プリントして見た目で判断する必要があります。
蛍光ピンクを使えば特色が全部再現できる、という話ではありません。今回確認できたのは、FG27、FG28、FG29の金赤について、PODで十分近い色まで持っていけた、という話でした。

左;PC1120で蛍光ピンクDIC159をプリント 右;PC1120プロセスモードでプリント
MIYUのひとこと
最初は、DICのWebサイトに載っていたCMYK値をそのまま使って失敗しました。そこからDICチップを測って、インキ缶を見て、オフセットで刷って、PODでプリントして、また測色しました。
そして最後に答えをくれたのは、キンアカとは全然関係なさそうだった1枚の夕焼けでした。
「PODでは無理」で終わらせなくてよかった。自分の目で見る。数字でも確かめる。そして、まだ方法があるんじゃないかと疑ってみる。
キンアカがプリントできたこと以上に、このblog4回の経験が大きな収穫だったような気がします。
連載【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】の他記事はこちら
➡第1回:キンアカで失敗しました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
➡第2回:キンアカの正体は配合表に書いてありました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
➡第3回:キンアカはプロセスカラーでは出ません。刷って、測って、確定しました【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】
➡第4回:PODでは無理だったキンアカ。蛍光ピンクを足したらΔE1.04【キンアカのナゾを解き明かすシリーズ】