クリープ処理計算方法とクリープ対策
クリープ処理とは? 中綴じ冊子で起こる字切れ問題
中綴じ製本では、ページ数が増えたり紙が厚くなると、内側のページが必然的に外側に押し出されて、小口側で飛び出します。この飛び出しが原因で、インデックスやノンブル(ページ番号)、フレームデザインなどにズレが生じ、製品の美しさや機能に影響を与えることがあります。
特に、紙が厚くてページ数が多い場合、この飛び出しが目立ち、小口側での「字切れ」や不揃いが品質的に大きな問題となります。これらの問題を防ぐために行うのがクリープ処理です。
特に次のような場合にクリープ処理が重要になります。
小口部分にインデックスがある場合
インデックスの幅がページごとに揃っていることが理想です。しかし、ページが飛び出したまま小口を断裁すると、インデックスの幅がバラバラになり、見た目が不揃いになります。
写真集でフレームデザインがある場合
写真の周りに白い余白がフレームとしてデザインされている場合、ページ飛び出しにより小口側のフレームの幅が変わることがあります。これによってデザインのバランスが崩れてしまいます。
小口部分にノンブル(ページ番号)や文字がある場合
ページ飛び出しによりノンブルや文字の位置がずれると、断裁時に「字切れ」が発生し、ページ番号や文字が切れてしまうリスクがあります。
中綴じの用語解説
ノド側
「ノド」とは、冊子や本を開いたときに、ページの綴じられている内側の部分を指します。ノド側は、ページが束ねられている部分です。イメージとしては、ノートを開いたときの真ん中の折り目が「ノド」です。
小口側(こぐち)
「小口」とは、冊子や本を開いたときに、ページの外側(本の端っこ)の部分を指します。ページをめくる側が小口側です。
断裁(だんさい)
「断裁」とは、本や冊子を製本した後、ページの端をカットして綺麗に揃えることを指します。ページ数が多くなると、ページの端がずれてしまうため、断裁でそれを整えます。
小口の字切れを防ぐクリープ処理の方法
スバルグラフィックではこの課題を解決するため、2つの方法でクリープ処理を行います。
ページ全体を内側にずらす方法(一般的な手法)
この方法は、ほとんどの中綴じ冊子で採用される標準的な手法です。ページ数が増えると、内側のページが外側よりも飛び出してしまうため、飛び出したページを少しずつ内側にずらすことで、小口側での字切れを防ぎます。特に、小口部分にインデックスやノンブル(ページ番号)がある場合、この方法が有効です。ページ全体を内側にずらすことで、インデックスやノンブルが飛び出して「字切れ」する問題を防ぎます。
ただし、見開きにまたがる写真や地図がある場合は、中央部分(ノド)のデザインがズレる可能性があるため注意が必要です。
ノドを基準に変倍をかける方法(見開きの絵柄重視の場合)
この手法は、見開きにまたがる写真やイラストを重視する場合に適しています。
例えば、地図や写真が見開き中央にレイアウトされ、なおかつ小口にインデックスがある場合、通常のクリープ処理ではページ全体が内側に移動することで、見開き真ん中部分の情報がカットされてしまいます。中央部分のデザインを保ちながら、小口側のズレも防ぐためにはノドを基準にしてページ全体に変倍をかけることで、中央部分のデザインを保ちながら、小口側のズレも防ぐことができます。
クリープ処理の計算式
クリープ処理を正確に行うには、冊子の総ページ数や紙の厚みに基づいてクリープ量を計算し、それに応じて面付けレイアウトを調整することが重要です。ここでは、具体的な計算方法や変倍率の求め方について説明します。
ページ全体を内側にずらす場合の計算方法
クリープ量を計算するための基本的な考え方は、冊子の背の部分を丸い円として捉え、その円周の一部を使って計算します。
計算式 (紙の厚み X (総ページ数÷2) X 円周率 ) ÷ 4
- 紙1枚の厚みに、総ページ数の半分の値を掛けます。中綴じでは1枚の紙が2ページ分に相当します。
- 次に、この数値に**円周率(3.14)**を掛けます。背の丸い部分を円として、その周長を求めるためです。
- その数値を4で割ることで、クリープ量(ズレの量)を求めます。冊子の背の丸い部分を円の一部と見なすため、この操作が必要です。
例: 紙厚0.18mm、総ページ48ページの冊子
これを計算すると
( 0.18㎜ X( 48 ÷ 2 ) X 3.14 ) ÷ 4 = 3.3912
つまり、この紙厚48ページの中綴じ冊子では、約3.4mmのクリープ値が必要となります。
ノドを基準に変倍を掛ける場合の変倍率
変倍率は紙厚とページ数から求められたクリープ値を元に計算します。
一番内側ページの変倍率 = (小口サイズークリープ値)÷ 小口サイズ
例: 仕上りサイズA4タテ 紙厚0.18mm、総ページ48ページの冊子 クリープ値3.4㎜の場合
変倍率を計算すると、
(210-3.4) ÷ 210 = 98.4%
この冊子の一番内側のページはノド側基準でX方向に98.4%に変倍することでクリープ処理を行います。
クリープ処理量の設定
ページ全体を内側にずらしてクリープ処理を行う
折番号 | クリープ値 |
01折目(外側) | 0.00㎜基準 |
02折目 | 0.31㎜ |
03折目 | 0.62㎜ |
04折目 | 0.93㎜ |
05折目 | 1.24㎜ |
06折目 | 1.55㎜ |
07折目 | 1.86㎜ |
08折目 | 2.17㎜ |
09折目 | 2.48㎜ |
10折目 | 2.79㎜ |
11折目 | 3.10㎜ |
12折目(内側) | 3.41㎜ |
クリープ値 ÷ ( ( 総ページ数 / 4 )-1 )
ノドを基準に変倍を掛けてクリープ処理を行う
折番号 | クリープ値 | 変倍率 |
01折目(外側) | 0.00㎜基準 | 100%基準 |
02折目 | 0.31㎜ | 99.8% |
03折目 | 0.62㎜ | 99.7% |
04折目 | 0.93㎜ | 99.6% |
05折目 | 1.24㎜ | 99.4% |
06折目 | 1.55㎜ | 99.3% |
07折目 | 1.86㎜ | 99.1% |
08折目 | 2.17㎜ | 99.0% |
09折目 | 2.48㎜ | 98.9% |
10折目 | 2.79㎜ | 98.7% |
11折目 | 3.10㎜ | 98.5% |
12折目(内側) | 3.41㎜ | 98.4% |
1折目にはX方向の変倍を行わず、2折目以降、変倍率を変えて最も内側の12折目が最大の変倍率となります。
※Y方向には変倍は行いません
(仕上サイズ横 - クリープ値) ÷ 仕上サイズ横
クリープ処理は誰の役割?
束見本を作成して実測
さて、前段でお伝えしたクリープ処理の方法や計算式は、あくまで理論値です。実際には、もっと正確なクリープ補正値を求めるためには、印刷本紙を使って束見本を作り、飛び出し量を実測することをおすすめします!
この実測値がわかれば、デザインの段階で飛び出し量を想定したレイアウトが可能になり、設計通りの理想的な中綴じ冊子を作ることができます。見開きのデザインやインデックスの幅など、細かい部分もしっかり調整できますよ。
もちろん、クリープ補正を考慮していないデータでも心配ありません!
私たちスバルグラフィックでは、
用紙の厚みやページ数に応じて最適なクリープ処理を行い、
字切れのない美しい中綴じ冊子を仕上げます。お任せください!
スバルグラフィックの自動クリープ処理
スバルグラフィックでは、CTPデータ作成のワークフロー『Prinect』を活用しています。このシステムは用紙データベースを搭載していて、非常に便利なんです!特に、Prinectの面付けアプリ『SignaStation』では、データを印刷用紙サイズに面付けし、用紙の銘柄や斤量を選ぶだけでOK。あとは、用紙の厚みやページ数といった情報を用紙データベースからインポートし、クリープ値を自動計算。CTP面付けレイアウト上でページ位置を自動補正してくれるんです!
さらに、ページ全体を内側にずらすクリープ処理でも、ノドを基準に変倍をかけるクリープ処理でも、両方のモードに対応しているので、デザインによって使い分けができます。つまり、どんなデザインでも簡単に最適なクリープ処理ができちゃうんです!
クリープ処理で仕上がりを完璧に
- ページ全体を内側にずらす方法
- ノドを基準に変倍をかける方法