こんにちは。スバルグラフィックのMIYUです。「校正で確認したはずなのに、完成した冊子の肌色が赤っぽく沈んでいる・・・」 そんなPP加工にまつわるトラブルは決して珍しいことではありません。
なぜ、モニター画面や加工前の刷り本と、これほどまで色がズレてしまうのでしょうか。その原因と「事故を防ぐための数値予測」についてお伝えします。
PP加工で色が沈んでしまうのは、第2回で解説した「濡れ色現象」によるものです。ならば解決策はシンプル。「PP加工で濃くなる分を見越して、印刷の段階であらかじめ中間調を薄く刷っておく」のです。今回は、この「逆算して薄く刷る」という方法で、実際にどれほど理想の色に近づけられるのか、実験・検証を行いました。
実験にあたり、以下の4つの条件を用意しました。
今回のゴールは、「①の狙った色」と「④の完成品」のズレをなくすことです。
① ノーマル印刷(PP無し):今回のターゲット(狙いたい理想の色)
② ノーマル印刷 + PP:通常通り刷って、そのままPP加工したもの
③ 補正印刷(PP無し):逆算して、あらかじめ薄く刷った状態
④ 補正印刷 + PP:逆算して薄く刷り、PP加工を施した完成品
この色味の変化を、客観的な数値で表す「ΔE(デルタ・イー/色差)」で測定します。ちなみにΔEは、数値が「3.0」を超えると誰が見ても違いが分かり、「6.5」を超えると人はまったく別の色として捉えるレベルのズレになります。
検証1:普通に刷ってPP加工を施した場合(①と②の比較)
まずは、何も対策をせずに通常通り刷ってPP加工をした場合(②)のデータです。ターゲット(①)とどれくらいズレているかを見てみましょう。
まずは、何も対策をせずに通常通り刷ってPP加工をした場合(②)のデータです。ターゲット(①)とどれくらいズレているかを見てみましょう。
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色 |
ノーマル印刷との差 |
|---|---|
|
C |
4.84 |
|
M |
5.33 |
|
Y |
3.03 |
|
K |
8.05 |
|
グレー(G7基準、C50、M40、Y40 ) |
4.13 |
特にブラック(K)のズレが「8.05」と、別の色に見えるレベルで突出しているのがわかります。Kがこれほど沈み込むことで、全体のコントラストが強まりすぎてしまい、「予想より暗い」という事故に繋がるのです。
では、本題です。「加工後にこれだけ濃くなる」という上昇分をあらかじめ計算し、印刷の段階でその分を薄く刷る「補正」を施したらどうなるでしょうか。ターゲット(①)と、補正後にPP加工をした完成品(④)を比較した結果がこちらです。
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色 |
ノーマル印刷との差 |
|
C |
1.13 |
|
M |
1.20 |
|
Y |
0.40 |
|
K |
1.78 |
|
グレー(G7基準、C50、M40、Y40 ) |
0.78 |
あんなに突出してズレていたブラック(K)も、補正によって「1.78」まで収束しました!全体の数値も、「横に並べて見比べて初めて気づく」レベル(0.78〜1.78)まで精度が向上しています。事前に数値で予測し、防ぐことが可能だと証明されました。
この「数値で予測して補正する」手法は、プロにしかできない特別なことではありません。予測のルールさえわかれば、事前に画面上でシミュレーションしたり、入稿データを補正したりすることが、誰でも可能になります。
狙った通りの色を確実に再現するための、具体的な「シミュレーションと補正のやり方」いよいよ最終回でその種明かしをします。
➡ 第1回:PP加工で色が濃くなるのはなぜ?網点の太りと視覚の不思議
➡ 第2回:なぜ?PP加工で色が濃く見えるヒミツ。科学でわかる「濡れ色」の仕組み
➡ 第3回:紙質が変わっても起きる「色の変化」
➡ 第1回:光沢加工ってどれがいいの?PP貼りを中心に、代表的な3つの技法
➡ 第2回:後加工で失敗しない!PPフィルムの種類と使い分けの基本ガイド
➡ 第3回:両面PP加工の落とし穴?光沢加工のコスト・納期・用紙のクセ
➡ 第4回:失敗しない光沢加工!PPフィルムは紙より小さい?
➡ 第5回:PP貼りだけじゃない?光沢+αの表面加工を組み合わせて印象アップ