紙じゃないから、〝書き味〟も違うユポは「水に強い紙」として知られる合成紙。
主原料はポリプロピレンで、繊維ではなく樹脂のシート構造になっています。
つまり、インクが“紙に染み込む”のではなく、“表面で乾く”タイプの素材です。
だから、雨にも強いし、破れにくい。
そのタフさから、屋外ポスターやマニュアル、そして選挙の投票用紙にも採用されています。
「滑らかで書きやすい」「水に強い」──この2つを両立する珍しい素材なんです。
でも一方で、普通の紙と違って“書いてすぐ触ると消える”こともある。
今日は、その“ちょっとしたクセ”を、印刷会社の私たちが9種類のペンで徹底検証しました。
使用紙: ニューユポFGS#130
方法: 書いた直後(1分後)と2時間後にウエットティッシュで擦って比較。
| 筆記具 | 詳細 | インキタイプ | 1分 | 120分 | コメント | 
| 水性顔料マジック | PROCKEY | 水性×顔料 | ○ | ○ | 乾きは遅いが、表面にしっかり定着。 | 
| 油性顔料マジック | パワフルネーム | 油性×顔料 | ◎ | ◎ | 最強。耐水・耐擦れ・視認性すべて良好。 | 
| 水性染料マジック | ペンテルサインペン | 水性×染料 | × | × | にじんで乾かない。完全NG。 | 
| 油性染料マジック | ハイマッキー | 油性×染料 | ○ | ◎ | 実用十分。乾燥で安定。現場でも◎。 | 
| 油性(顔料+染料)ボールペン | JETSTREAM | 油性×混合(染料+顔料) | △ | ○ | 乾燥後は安定。書き味も良好。 | 
| エマルジョンインキBP | bLen | 油性×乳化(混合) | ◎ | ◎ | 乾き早く、にじみゼロ。細字用途に最強。 | 
| 水性顔料ボールペン | SARASA | 水性×顔料 | × | × | 乾かない。こすると消える。 | 
| シャープペンシル | 0.5mm | 黒鉛 | △ | △ | 時間が経っても擦るとぼやける。仮メモ用。 | 
| 鉛筆 | HB | 黒鉛 | △ | △ | 同上。消えないが薄くなる。 | 
ユポはつるつるだから、インクが中に染み込まない。
だから、表面で乾くまでに少し時間がかかります。
その分、“すぐ触らない”だけで結果が大きく変わります。
鉛筆の黒い部分は黒鉛(こくえん)という粉です。
一般の紙は、繊維のすき間に黒鉛が入り込むことで定着します。
でもユポはつるつるの樹脂シート。
黒鉛が入り込む場所がないので、上に乗った状態になります。
だから、時間がたっても乾燥したり固まったりはしません。
擦れば薄くなりますが、完全に消えるわけではありません。
「仮メモ」や「作業中の控え」なら十分実用的です。
身近な例でいえば──
「水性」は水で洗える絵の具、
「油性」は落ちにくいマジック。
水性: インクが“水系”。発色がキレイだけど乾きが遅い。ユポではにじみやすい。
油性: インクの溶剤が“油系”。乾くのが速く、ツルツル面でも密着しやすい。
💡つまりユポでは「油性」が有利!
インクの色の作り方が違います。
染料: 水に“溶ける色”。透明感があって発色がいい。
→ でも水や擦れに弱い。
顔料: 水に“溶けない色の粉”。表面に膜を作る。
→ 擦れや水に強い。
💡顔料=タフ。染料=キレイ。でも弱い。
| タイプ | 特徴 | 代表製品 | ユポ適性 | 
| 油性×顔料 | 表面にしっかり残る。乾きが速く、耐水・耐擦れに最強。 | パワフルネーム | ◎ 最強 | 
| 油性×染料 | 発色がよく書き味も軽い。やや擦れに弱いが実用範囲。 | ハイマッキー | ○ 実用十分 | 
| 水性×顔料 | にじみにくく発色もきれい。だが乾きが遅い。 | プロッキー | △ 乾き遅い | 
| 水性×染料 | 鮮やかで透明感があるが、水・擦れに極端に弱い。 | ペンテルサインペン | × 不可 | 
| エマルジョン(油+水混合) | 水性のなめらかさ+油性の速乾性を両立。ツルツル面にも定着。 | ゼブラ「bLen」 | ◎ 最強 | 
発色を重視するなら「油性染料」
耐久性・現場利用なら「油性顔料」
ノート用途でバランス最強は「エマルジョン」
「水性系」はいずれも乾きが遅く、ユポでは非推奨
ゼブラの「bLen」などに使われている特殊インク。水と油の中間(エマルジョン)で、どちらのいいとこ取り。
油性と同じ速乾
水性と同じ書き味
しかも、ユポにもしっかり残る!
書き味は軽くて、擦っても滲まない。
ノートやメモ帳に書くなら、このタイプが最強のバランスです。
ユポとひとことで言っても、実は「表面の仕上げ」によって筆記のしやすさがまったく違います。
同じ“ユポ”でも、手で触れたときの感触や、ペン先の滑り方、インクの乾き方が異なるのです。
この表では、代表的な3つのグレード——
「ニューユポFGS」「スーパーユポFRBW」「ウルトラユポFEBG」——を比較し、
それぞれの筆記適性とおすすめ用途をまとめています。
| グレード | 表面 | 鉛筆 | 油性ペン | 内 容 | 
| ニューユポFGS | マット調 | ○ | ◎ | 表面摩擦があり筆記性が最も高い。マーカーやボールペンで安定して書ける。鉛筆はやや滑るが実用範囲。 | 
| スーパーユポFRBW | 光沢(一般的なコート紙相当) | × | ○ | コート紙に近いツヤを持つ。印刷発色が良く、筆記よりも印刷用途に適する。鉛筆は定着しにくい。 | 
| ウルトラユポFEBG | 光沢(FRBWと同等レベル) | × | ○ | スーパーユポをベースに白色度を高めた設計。ツヤや見た目の差は大きくなく、筆記適性も同等。印刷発色重視の用途向け。 | 
書く目的なら → ニューユポFGS
印刷中心なら → スーパーユポFRBW
または ウルトラユポFEBG
3種類はいずれも「ユポ合成紙」という共通点を持ちますが、筆記性の差は表面の摩擦とツヤの違いによるものです。
今回の比較は、メーカー資料と実際の印刷・筆記テストの両方を踏まえて作成しています。
ユポは、ペン先がスッと走る“なめらかな書き味”が特徴です。
一般の紙のように繊維の抵抗がないから、筆圧が軽くてもきれいな線が書ける。
この感覚は、ユポならではの気持ちよさです。
ただし──その「なめらかさ」は、インクが定着しにくいという面と表裏一体。
書いた直後に手を触れると、インクや黒鉛がにじんだり、擦れて薄くなったりします。
つまり、
書き心地は抜群。でも、扱いには少しコツがいる。
これがユポの正直な筆記特性です。
「滑らかで、疲れにくい」
「でも、すぐ触るとにじむ」
このトレードオフを理解して、道具や場面に合わせて使い分けること。
それが、ユポを“書ける紙”として使いこなすいちばんのコツです。
ユポは、紙とはちがう発想で使う素材です。
書き味の心地よさも、水への強さも、うまく使えば大きな武器になります。
大切なのは、“書けるかどうか”ではなく、“どう使うか”を知っていること。
扱いに少しコツのいる素材ですが、
その特性をわかっていればトラブルを防ぎ、仕上がりを安定させられます。
ユポは、“知って使う”ことで本領を発揮する、奥の深い素材です。
「ユポって、ちょっと気難しいけど、ちゃんと向き合えばすごく頼れる紙ですね。
ペンによって反応が違うのも、“素材と会話してる”感じがして面白かったです。
ただの耐水紙じゃなくて、使う人を試してくる相棒みたい。」
➡ 第1回:ユポってどんな紙?水に濡れても破れない不思議な魅力に迫る!
➡ 第2回:ユポって実はエコなの!?気になるお値段と「高いワケ」を解説!
➡ 第3回:印刷トラブル回避!ユポ印刷のココがポイント! 
➡ 第4回:ユポを使った製本はムズかしい?成功のカギは紙目と折!
➡ 第5回:ユポ紙で「+α」の価値を!活用術と〝正しい捨て方〟