第6回:書けない?書ける?ユポの筆記特性を徹底検証
― 日本一リアルに“書き心地”を確かめてみた ―
紙じゃないから、〝書き味〟も違うユポは「水に強い紙」として知られる合成紙。
主原料はポリプロピレンで、繊維ではなく樹脂のシート構造になっています。
つまり、インクが“紙に染み込む”のではなく、“表面で乾く”タイプの素材です。
だから、雨にも強いし、破れにくい。
そのタフさから、屋外ポスターやマニュアル、そして選挙の投票用紙にも採用されています。
「滑らかで書きやすい」「水に強い」──この2つを両立する珍しい素材なんです。
でも一方で、普通の紙と違って“書いてすぐ触ると消える”こともある。
今日は、その“ちょっとしたクセ”を、印刷会社の私たちが9種類のペンで徹底検証しました。
実験してみた|ユポに9種の筆記具で書く
使用紙: ニューユポFGS#130
方法: 書いた直後(1分後)と2時間後にウエットティッシュで擦って比較。
| 筆記具 | 詳細 | インキタイプ | 1分 | 120分 | コメント |
| 水性顔料マジック | PROCKEY |
水性×顔料 |
○ | ○ |
乾きは遅いが、表面にしっかり定着。 |
| 油性顔料マジック | パワフルネーム |
油性×顔料 |
◎ | ◎ |
最強。耐水・耐擦れ・視認性すべて良好。 |
| 水性染料マジック | ペンテルサインペン |
水性×染料 |
× | × |
にじんで乾かない。完全NG。 |
| 油性染料マジック | ハイマッキー |
油性×染料 |
○ | ◎ |
実用十分。乾燥で安定。現場でも◎。 |
| 油性(顔料+染料)ボールペン | JETSTREAM |
油性×混合(染料+顔料) |
△ | ○ |
乾燥後は安定。書き味も良好。 |
| エマルジョンインキBP | bLen |
油性×乳化(混合) |
◎ | ◎ |
乾き早く、にじみゼロ。細字用途に最強。 |
| 水性顔料ボールペン | SARASA |
水性×顔料 |
× | × | 乾かない。こすると消える。 |
| シャープペンシル | 0.5mm |
黒鉛 |
△ | △ |
時間が経っても擦るとぼやける。仮メモ用。 |
| 鉛筆 | HB |
黒鉛 |
△ | △ |
同上。消えないが薄くなる。 |
🧩 結果まとめ
ユポはつるつるだから、インクが中に染み込まない。
だから、表面で乾くまでに少し時間がかかります。
その分、“すぐ触らない”だけで結果が大きく変わります。
-
油性系マーカー/ボールペン → ◎(安定)
-
水性染料ペン → ×(乾かない)
-
鉛筆・シャープペン → △(擦るとぼやける)


🧪 なぜ鉛筆やシャーペンはぼやけるの?
鉛筆の黒い部分は黒鉛(こくえん)という粉です。
一般の紙は、繊維のすき間に黒鉛が入り込むことで定着します。
でもユポはつるつるの樹脂シート。
黒鉛が入り込む場所がないので、上に乗った状態になります。
だから、時間がたっても乾燥したり固まったりはしません。
擦れば薄くなりますが、完全に消えるわけではありません。
「仮メモ」や「作業中の控え」なら十分実用的です。
🧠 水性と油性ってどう違う?
身近な例でいえば──
「水性」は水で洗える絵の具、
「油性」は落ちにくいマジック。
-
水性: インクが“水系”。発色がキレイだけど乾きが遅い。ユポではにじみやすい。
-
油性: インクの溶剤が“油系”。乾くのが速く、ツルツル面でも密着しやすい。
💡つまりユポでは「油性」が有利!

🎨 染料と顔料ってなにが違う?
インクの色の作り方が違います。
-
染料: 水に“溶ける色”。透明感があって発色がいい。
→ でも水や擦れに弱い。
-
顔料: 水に“溶けない色の粉”。表面に膜を作る。
→ 擦れや水に強い。
💡顔料=タフ。染料=キレイ。でも弱い。


🧬 インクタイプ4種の特徴とおすすめ
| タイプ | 特徴 | 代表製品 | ユポ適性 |
| 油性×顔料 | 表面にしっかり残る。乾きが速く、耐水・耐擦れに最強。 | パワフルネーム | ◎ 最強 |
| 油性×染料 | 発色がよく書き味も軽い。やや擦れに弱いが実用範囲。 | ハイマッキー | ○ 実用十分 |
| 水性×顔料 | にじみにくく発色もきれい。だが乾きが遅い。 | プロッキー | △ 乾き遅い |
| 水性×染料 | 鮮やかで透明感があるが、水・擦れに極端に弱い。 | ペンテルサインペン | × 不可 |
| エマルジョン(油+水混合) | 水性のなめらかさ+油性の速乾性を両立。ツルツル面にも定着。 | ゼブラ「bLen」 | ◎ 最強 |
💡 インキタイプ特徴まとめ
-
発色を重視するなら「油性染料」
-
耐久性・現場利用なら「油性顔料」
-
ノート用途でバランス最強は「エマルジョン」
-
「水性系」はいずれも乾きが遅く、ユポでは非推奨
✨ エマルジョンインキってなに?
ゼブラの「bLen」などに使われている特殊インク。水と油の中間(エマルジョン)で、どちらのいいとこ取り。
-
油性と同じ速乾
-
水性と同じ書き味
-
しかも、ユポにもしっかり残る!
書き味は軽くて、擦っても滲まない。
ノートやメモ帳に書くなら、このタイプが最強のバランスです。
🧾 ユポのグレード別「書きやすさ」
ユポとひとことで言っても、実は「表面の仕上げ」によって筆記のしやすさがまったく違います。
同じ“ユポ”でも、手で触れたときの感触や、ペン先の滑り方、インクの乾き方が異なるのです。
この表では、代表的な3つのグレード——
「ニューユポFGS」「スーパーユポFRBW」「ウルトラユポFEBG」——を比較し、
それぞれの筆記適性とおすすめ用途をまとめています。
| グレード | 表面 | 鉛筆 | 油性ペン | 内 容 |
| ニューユポFGS |
マット調
|
○
|
◎
|
表面摩擦があり筆記性が最も高い。マーカーやボールペンで安定して書ける。鉛筆はやや滑るが実用範囲。
|
| スーパーユポFRBW |
光沢(一般的なコート紙相当) | × | ○ | コート紙に近いツヤを持つ。印刷発色が良く、筆記よりも印刷用途に適する。鉛筆は定着しにくい。 |
| ウルトラユポFEBG |
光沢(FRBWと同等レベル)
|
×
|
○
|
スーパーユポをベースに白色度を高めた設計。ツヤや見た目の差は大きくなく、筆記適性も同等。印刷発色重視の用途向け。 |
✍️ グレード別解説
- ニューユポFGS
表面のツヤを抑えたマット調タイプ。
筆記具のインクや黒鉛が滑りにくく、ボールペン・マーカー用途では安定して書けます。
鉛筆は摩擦がやや足りず、強い筆圧でないと残りにくい傾向。 - スーパーユポFRBW
一般的なアート紙・コート紙と同程度の光沢を持つタイプ。
鉛筆やシャープペンの筆記はほぼ不可。
油性マーカーや油性ボールペンでは問題なく使用可能。 - ウルトラユポFEBG
スーパーユポをベースに白色度を調整したグレード。
ツヤや筆記性はスーパーユポとほぼ同等で、肉眼では大きな違いは感じられません。
印刷仕上げの見た目を重視する用途に適しています。
🧭 ユポグレード別筆記適性のまとめ
書く目的なら → ニューユポFGS
印刷中心なら → スーパーユポFRBW
または ウルトラユポFEBG
3種類はいずれも「ユポ合成紙」という共通点を持ちますが、筆記性の差は表面の摩擦とツヤの違いによるものです。
今回の比較は、メーカー資料と実際の印刷・筆記テストの両方を踏まえて作成しています。
✍️ ユポの「滑らかな書き味」は魅力でもあり、
注意点でもある。
ユポは、ペン先がスッと走る“なめらかな書き味”が特徴です。
一般の紙のように繊維の抵抗がないから、筆圧が軽くてもきれいな線が書ける。
この感覚は、ユポならではの気持ちよさです。
ただし──その「なめらかさ」は、インクが定着しにくいという面と表裏一体。
書いた直後に手を触れると、インクや黒鉛がにじんだり、擦れて薄くなったりします。
つまり、
書き心地は抜群。でも、扱いには少しコツがいる。
これがユポの正直な筆記特性です。
「滑らかで、疲れにくい」
「でも、すぐ触るとにじむ」
このトレードオフを理解して、道具や場面に合わせて使い分けること。
それが、ユポを“書ける紙”として使いこなすいちばんのコツです。
🧩 まとめ|“書けるか”より、“どう使うか”
ユポは、紙とはちがう発想で使う素材です。
書き味の心地よさも、水への強さも、うまく使えば大きな武器になります。
大切なのは、“書けるかどうか”ではなく、“どう使うか”を知っていること。
扱いに少しコツのいる素材ですが、
その特性をわかっていればトラブルを防ぎ、仕上がりを安定させられます。
ユポは、“知って使う”ことで本領を発揮する、奥の深い素材です。
💬 MIYUのひとこと
「ユポって、ちょっと気難しいけど、ちゃんと向き合えばすごく頼れる紙ですね。
ペンによって反応が違うのも、“素材と会話してる”感じがして面白かったです。
ただの耐水紙じゃなくて、使う人を試してくる相棒みたい。」
✨ 関連記事
➡ 第1回:ユポってどんな紙?水に濡れても破れない不思議な魅力に迫る!
➡ 第2回:ユポって実はエコなの!?気になるお値段と「高いワケ」を解説!
➡ 第3回:印刷トラブル回避!ユポ印刷のココがポイント!
➡ 第4回:ユポを使った製本はムズかしい?成功のカギは紙目と折!
➡ 第5回:ユポ紙で「+α」の価値を!活用術と〝正しい捨て方〟